本書は儀式について教学の面からアプローチした仏教書の中でも珍しい内容で、善導大師の『法事讃』を読み解きながら浄土真宗における儀式にこめられた願いを訪ねていきます。現在、真宗大谷派の法要で『法事讃』がそのまま用いられることが無く、あまりなじみのあるものではありませんが、親鸞聖人の当時、人々にとって実は非常に身近なものであったことが本文中で述べられています。 また、著者は『法事讃』に語られる法事を死者に対する「追善の仏事」ではなく、生きている私たちが念仏を手渡していくための「報恩の仏事」と受け取り、これが浄土真宗の儀式の願いを語る上でまさに「源流」であると読み解いています。